デイヴィッド・プロッツ
ジーニアス・ファクトリー
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人気ランキング : 101136位
定価 : ¥ 2,100
販売元 : 早川書房
発売日 : 2005-07-21 |
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精子バンクが改めて浮き彫りにする家族のカタチ |
「ノーベル賞受賞者精子バンク」。天才=ノーベル賞というわかりやすい図式。タブロイド紙にうってつけのニュースソースだ。まずこういう機関が実際に80年代から20年近くに渡ってアメリカで存在していたことに驚く。果たしてその結果は・・・。本書はこの悪夢的ユーモアに満ちたバンクの真相を描くことを下敷きに、不妊治療の歴史も俯瞰的に紹介している。筆者自身の精子ドナー体験も描かれ、現代の目覚しいばかりに発展を遂げている精子バンク業界の功罪も問うている。取材が可能だったドナー、母親、精子バンク・ベイビーたちのドラマを丹念に追いかけることによって、「家族とはいったい何か」という根源的な問題に読者の目線をうながしている。父母、妹のことを思う。
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家族に対する愛情とは何かを教えてくれる一冊 |
原作者の他の著作、翻訳者の別の訳本を読みたくなる数少ない本に出会いました、私の読んだ、2005年に読んだ本のベスト1にします。
遺伝子関係の業務に携わっていることもあり、その方面から興味を持ち、読み始めましたが、妻と3人の子どもに対する愛情を再確認し、もっと、もっと大切にしなくてはいけないと感じることができたことが、とても大きな収穫でした。
翻訳がすばらしいと感じたのは、原作はもっと面白いはず(対象や内容から類推するに、つまりは興味を持って購入したのに)なのに、読むとつまらないという本をいくつか経験していますが、そういう本は訳が適切ではないのではないかと、この本を読んで感じました。翻訳者と原作者に性格や姿勢で共通項があるのか、翻訳者が原作者になりきっている、そんな印象を持ちました。(当方にとっては)高価な部類の本ですが、迷わず購入することをお勧めします。
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子育てがなぜか楽しくなる |
まず翻訳がすばらしく、原文が日本語で書かれたものかと思うほど、
見事である。
途中で自分の体験談など意図的に挿入することで
精子バンクに対する考え方を整理しようとしているが、
これが逆効果で緊張感が中断されてしまう。
それ以外は、これだけの悪条件の中、対象者によく迫ったと思う。
サンプル数が少ないという指摘はあるが、研究書ではなく、
筆者も断定的な書き方はしていないので、
読み物として十分に面白い。
本書を読んで、つらい時もあった子育てがなぜか
楽しく感じられるようなった。
環境が子どもに与える影響の大きさを立証しようとして
いるからであろう。
思わぬ副産物であり、子育て中の人に
お薦めしたい。
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実際の人生 |
ノーベル賞受賞者の精子バンクは確かにばかげたアイデアで、数年前に閉鎖されてしまったわけですが、実際にそこから生まれた人々や、それを利用した人々はいまもなおそれを人生の一部に抱えて生きているわけです。そんな人々の等身大の姿に迫っているのが非常に面白い。今年のノンフィクションのなかでは一番。
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期待外れ。突っ込み不足。 |
そもそもこの内容で1冊の本を出したこと自体間違いなのでは。
十二分に期待させるタイトル・帯ですが、読み始めてみると内容が
スカスカなのがすぐわかります。精子バンクという施設の性質上
やむをえないことかもしれませんが、提供者(ドナー)は一部を
除き匿名、生まれた子供も一部を除き匿名。調査した事例数が
少なすぎて(30例)、説明に統計的な有意性がない。ノーベル賞
受賞者限定の精子バンクが存在したことそのものはショッキングで
ジャーナリスティックな面白みありますが何しろ創設者はとうの昔
に他界、施設の内容を知るインサイダーへの取材がほとんど不可能
という状況ではこういう皮相的な内容になるのは致し方なしか。
後半、著者自身が精子ドナー体験をする下りに至ると、人工授精の
歴史など、どんどん「ジーニアス・ファクトリー」から論点がずれ
ていく。期待はずれ。